ブラジル:南米の巨人が抱く「ハチドリの多様性」

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大陸の半分を占める巨大な国

ブラジルは、南米大陸の約半分を占める巨大な国です。
面積は約851万平方キロメートルで、日本の約22.5倍、世界第5位の広さを誇ります。
東西の距離は約4,300キロメートル、南北は約4,400キロメートルにも及びます。

この広大な国土には、約90種のハチドリが生息しています。

エクアドルやペルーより種数は少なく感じるかもしれませんが、ブラジルのハチドリの魅力はその「多様性」と「環境への適応力」にあります。
熱帯雨林、湿地、草原、温帯林、それぞれの環境でハチドリは独自の生き方を進化させているのです。

世界最大の熱帯雨林、アマゾン

ブラジルと聞いて最初に思い浮かぶのは、やはりアマゾンでしょう。
アマゾン川流域の熱帯雨林は、地球の肺と呼ばれ、地球上で最も重要な生態系のひとつです。

森の階層とハチドリ

  • 林冠(高さ40〜50メートル):日光が強く、多くの花が咲く。長いくちばしを持つハチドリが蜜を集め、羽の光沢で雌にアピールする姿も見られます。
  • 中層:枝の間や着生植物の花を利用する種が多く、枝から枝へ素早く飛び移る技術を駆使してエネルギーを確保。
  • 下層:光が届きにくい薄暗い場所でも、倒木や川沿いの空き地には花が咲き、低空を飛ぶハチドリが蜜を集めます。

水辺の適応

アマゾンは「川の王国」であり、雨季には水没林が出現します。

水没林の枝先の花に訪れるハチドリは、水面すれすれを飛ぶ高度な飛行技術を持っています。
こうした行動は、食物確保と生息地利用の両方に適応した結果です。

大西洋岸森林:固有種の宝庫

ブラジル東海岸沿いの大西洋岸森林(マタ・アトランティカ)は、アマゾンとは異なる独自の生態系を持っています。
霧や海洋性の気候に適応した植物や動物が生息し、ハチドリも約20種、ほとんどが固有種です。

  • 霧に濡れる花から蜜を吸うため、羽毛は水を弾く構造。
  • 木の枝間を素早く移動して捕食者から身を守る。
  • 標高や気候に応じた繁殖戦略を持ち、低地から山岳までさまざまな場所で見られます。

しかし、森林の大半が都市化や農地開発で失われ、現在残るのはわずか12パーセント。
ハチドリの生息地は断片化しており、種の存続にも影響が出ています。

セラード:中央部の広大なサバンナ

ブラジル中央部にはセラードと呼ばれる熱帯サバンナがあります。
草原と疎林が混在するこの土地では、乾季の火災や長距離飛行に適応したハチドリが見られます。

  • 雨季に合わせて繁殖を行い、蜜の多い時期に子育て。
  • 開けた環境で効率よく採餌するため、持久力のある飛行能力を進化。
  • 地下の豊富な根系に支えられた植物の花も利用して食料を確保します。

パンタナール:水没林に生きる

パンタナールは世界最大の淡水湿地帯で、季節による水位変動が激しい場所です。
雨季には大部分が水没し、乾季には草原が現れます。

  • 水没林の枝先や湿地の花を訪れるハチドリは、水面すれすれを飛ぶ技術を発達させています。
  • 食物の多様化として、花の蜜だけでなく昆虫も補助的に摂取。
  • 環境変化に応じて短期間で採餌場所を切り替える柔軟性を持っています。

南部温帯林:寒さに挑むハチドリ

南部のアララウカリア林には、寒さに強いハチドリが生息します。

  • 冬には「休眠(トーパー)」状態に入り、体温や心拍を下げてエネルギー消費を抑える。
  • 食料が少ない時期も、少量の蜜や昆虫を効率的に摂取して生き延びます。

固有種と進化の島々

ブラジルの広大な国土には、隔離された「進化の島」ともいえる環境があります。

  • テプイ(北部のテーブル状山):独自の生態系に適応した固有のハチドリ種が存在。
  • 海洋島(フェルナンド・デ・ノローニャなど):海を渡れないためハチドリはいませんが、近隣大陸の生物多様性との対比が興味深いです。

先住民族とハチドリ

ブラジルの先住民族にとって、ハチドリは神話や伝説の象徴。

  • 美しさや素早さ、花との関係が精霊の象徴として語られる。
  • トゥピ族の伝説では、ハチドリは恋する戦士の魂として花を訪れ続ける存在とされました。

現代ブラジルの課題と保全

ブラジルは生物多様性が豊富な一方、森林破壊や気候変動の影響が深刻です。

  • アマゾンでは違法伐採や牧場拡大で生息地が失われ、ハチドリの餌源や繁殖場所が減少。
  • 大西洋岸森林は断片化が進み、ハチドリの遺伝的多様性が脅かされています。
  • 気候変動で乾季が長くなり、花の開花時期がずれることで食料供給に影響。

しかし、ブラジルには約2,500の保護区があり、総面積は国土の約30パーセント。

市民団体やNGOによる再生プロジェクト、エコツーリズムの普及も進んでいます。
ハチドリはこうした保護区内で、安全に生活できる場所を確保しています。

南米の巨人が持つ責任

ブラジルの森林、湿地、サバンナには、他では見られない無数の生命が暮らしています。
ハチドリは、その豊かさと適応力の象徴です。

  • アマゾンの密林からセラードの草原、大西洋岸の山岳まで、種ごとに進化した姿を見ることができます。
  • ブラジルの自然を守ることは、地球全体の未来に関わる課題です。

広大な土地、豊かな水系、そして無数のハチドリ。
南米の巨人ブラジルは、生物多様性を守る重大な責任を担っています。

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WRITERこの記事の著者

hachidori-zukan

hachidori-zukan

【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!