チリは南米西部に位置する細長い国です。
南北に約4270キロメートルも伸び、アンデス山脈と太平洋に挟まれています。
アタカマ砂漠から氷雪地帯まで、非常に多様な自然環境を持ちます。
チリでは約10種のハチドリが記録され、これはハチドリの「最南端」を示します。
特にティエラ・デル・フエゴでは最南端の個体も確認されています。
チリのハチドリは、砂漠や高地、寒冷地などの極限環境に適応しました。独特な自然とハチドリの関係を見ていきましょう。
チリの地理と自然環境
南米西部の地理的特性
チリは南北に長く、東西に狭い地形を持ちます。
この形状が、国内に北から南へ、砂漠、温帯雨林、氷雪地帯へと変化する劇的な気候帯を生みます。
アタカマ砂漠:世界で最も乾燥した場所
チリ北部にはアタカマ砂漠が広がります。
年間降水量がほぼゼロの場所もあります。
それでもオアシス地域にはハチドリが生息します。
特にアサパ渓谷などが重要です。
カワリオハチドリという固有種は、砂漠の過酷な環境で生き延びています。
アンデス山脈:高地の厳しい環境
チリ国内のアンデス山脈には高地が連なります。
ここは極寒で酸素も少ない場所です。
しかし、オオハチドリなどの一部種はこの地で生活します。
標高3000メートルを超えると、ハチドリの生息は制限されます。
南部の温帯雨林と最南端
チリ南部には良好な状態の温帯雨林があります。
さらに南のティエラ・デル・フエゴは亜極地気候で、ハチドリが生息できる南限となっています。
チリの特徴的なハチドリ3種
オオハチドリ(Giant Hummingbird)
オオハチドリ(学名:Patagona gigas)はハチドリの中で最大級です。
体長は21~24センチメートルです。
羽ばたきの回数が少なく、滑空飛行が特徴です。
シナモン色や赤褐色の羽毛を持ち、高地の砂漠オアシスや山麓に適応しています。
プヤ属の花から蜜を得る重要な受粉者でもあります。
カワリオハチドリ(Chilean Woodstar)
カワリオハチドリ(学名:Eulidia yarrellii)はチリ固有の種です。
北部のわずか3つのオアシス渓谷にしか生息せず、絶滅の危機に瀕しています。
農業開発で生息地が失われ、個体数は激減しました。
国際的な保全と回復計画が急務です。
オアシスハチドリ(Oasis Hummingbird)
オアシスハチドリ(学名:Rhodopis vesper)はアタカマ砂漠の過酷な環境に適応しています。
チリ北部から南ペルーに分布します。
オスは青から赤褐色の喉を持ち、シナモン色の腰(下背)が特徴です。
限られた花資源でも生存できる能力があります。
チリのハチドリが直面する脅威
生息地の喪失
カワリオハチドリの最大の脅威は農業開発です。
オリーブ栽培などでオアシス地域が減少しています。
種間競争と外来種
ホソフタオハチドリがチリに侵入し、競争によってカワリオハチドリへの影響が懸念されます。
極限環境での気候変動
アンデス高地のハチドリにとって温暖化は深刻です。
気温上昇で生息地は高地に限られてしまいます。
保全と将来の取り組み
カワリオハチドリ回復計画
チリ政府はカワリオハチドリ保護のため回復計画を進めています。
生息地モニタリングや地域社会への啓発活動、小規模な国立公園設置も計画中です。
国際的な保全の注目
カワリオハチドリは国際的に絶滅危惧種に指定されています。
保全には地域住民との協力が不可欠です。
まとめ:ハチドリの南限を守る
チリには約10種のハチドリが生息し、極限環境への適応や特殊な植物との関係、地理的多様性が特徴です。
特にカワリオハチドリの保全は最優先課題です。
ハチドリを守ることは、チリの独特な自然と生態系を守ることにもつながります。
南限のハチドリ保護は、世界的にも重要な取り組みです。
参考文献
- Giant Hummingbird (Patagona gigas) – Wikipedia
- Chilean Woodstar Desert Hummingbird on the Edge of Extinction – Earth Archives
- Avian Research 13, 27 (2022). “Hummingbird-plant interactions in Chile: An ecological review of the available evidence.”
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

