ドミニカ共和国:島の標高勾配が生んだハチドリの進化と棲み分け

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ドミニカ共和国はイスパニョーラ島にあり、この島には3種類のハチドリが固有種として生息します。

海抜0mから3,000m超の標高勾配が特徴です。この高低差が山地の雲霧林や低地の乾燥林などを生み出し、ハチドリの棲み分けを促しました。

しかし現在、違法な森林伐採がこの固有生態系を脅かしています。

イスパニョーラ島の地形と標高勾配

複雑な山岳地形が基盤

ドミニカ共和国は複雑な山岳地形を持ちます。

中央部のピコ・ドゥアルテ山はカリブ海で一番高い山(海抜 3,101 m )で、
島で最も低い地点であるエンリキージョ湖(海面下 46 m)から、北東にわずか 85 キロメートルのところにあり、急激な高低差を生んでいます。

この環境差がハチドリの棲み分けの基盤となります。

標高帯ごとの環境の違い

海岸から低地は乾燥林が広がる地域です。

中標高は湿潤林が発達しています。
ここでは年間2,000mm以上の雨が降ります。

高標高には雲霧林イスパニョーラマツ林が分布し、霧に包まれた独特の生態系が形成されています。

固有ハチドリの標高分布と進化

広範囲に適応したエメラルドハチドリ

クロモンヒメエメラルドハチドリは固有種です。
標高300mから2,500mを中心に生息し、3,000mを超える高地まで分布します。

また、湿潤林やコーヒー農園などに生息します。

低地に適応したマンゴーハチドリ

Hispaniolan Mango (和名不明)は島で最大のハチドリです。
低地から中標高に分布し、乾燥林や庭園など開けた環境を好みます。

オスは黒い下面紫色の尾が特徴です。分子系統学により独立種と認められました。

全標高に分布するコビトハチドリ

コビトハチドリ体長6cmの小型種です。
海抜0mから1,600mまで幅広く分布します。

森林縁や低木林も利用し、季節的な標高移動をすることで蜜を確保します。

ハチドリの標高による棲み分け

体サイズと標高適応

ハチドリは体サイズで棲み分けをします。

小型のコビトハチドリは小さな花を利用します。
大型のHispaniolan Mango (和名不明)は低地に適応します。

体が大きい種は開けた環境での飛行が得意です。

採餌戦略と競争回避

クロモンヒメエメラルドハチドリは決まった花を巡回します。
空中で昆虫を捕食することもあります。

コビトハチドリは広範囲を移動し縄張りを防衛しません。
体が小さいため少量の蜜で生存可能です。

お互いに繁殖期のずれている事も種間の競争を減らしています。

シエラ・デ・バオルコと環境の危機

違法森林伐採の現状

シエラ・デ・バオルコ国立公園は生物多様性の中心地です。
しかし南斜面で違法な森林伐採が深刻です。

原因は、農民による作物栽培目的の、森林伐採です。
国立公園の境界が不明確なことも問題になっており、多くの地域で同様に森は狭くなっています。

森林分断と国境の課題

森林が分断されると標高移動ができなくなります。
これはハチドリの生存を困難にします。

隣国ハイチからの木炭需要も高まり、既にかなりの森林伐採が進んだハイチとドミニカ共和国…
衛星画像では国境の景観が分かれていて、保全にはハイチとの協力も重要です。

まとめ:標高勾配が生んだ多様性と危機

ドミニカ共和国の急峻な標高勾配が進化を促しました。
3種の固有ハチドリは明確な棲み分けで共存しています。

しかし、この貴重な多様性は違法伐採により危機に直面しています。

ハチドリと島民との共存は、国境を越えた協力と地域支援が不可欠です。
命の輝きを守るため、効果的な保全活動が今すぐ必要です。

参考文献

  1. Bündgen, R., & Kirwan, G. M. (2021). Hispaniolan Emerald (Riccordia swainsonii), version 1.1. In Birds of the World (J. del Hoyo, A. Elliott, J. Sargatal, D. A. Christie, and E. de Juana, Editors). Cornell Lab of Ornithology, Ithaca, NY, USA.
  2. Clark, C. J. (2009). Vervain Hummingbird (Mellisuga minima), version 1.0. In Neotropical Birds Online (T. S. Schulenberg, Editor). Cornell Lab of Ornithology, Ithaca, NY, USA.
  3. Kirwan, G. M., Sharpe, C. J., Sánchez Levels, C., & Marks, J. S. (2020). Hispaniolan Mango (Anthracothorax dominicus), version 1.0. In Birds of the World (J. del Hoyo, A. Elliott, J. Sargatal, D. A. Christie, and E. de Juana, Editors). Cornell Lab of Ornithology, Ithaca, NY, USA.
  4. Vermont Center for Ecostudies (2015). The Invisible Boundaries of Sierra de Bahoruco National Park. https://vtecostudies.org
  5. Grupo Jaragua (2014). The Persistent Tragedy of Sierra de Bahoruco: The Case of Las Mercedes. https://vtecostudies.org
  6. Butler, R. A. (2015). Gov’t officials permitted deforestation in Dominican Republic national park. Mongabayhttps://news.mongabay.com
  7. Angehr, G. R., & Dean, R. (2010). The Birds of Panama: A Field Guide. Cornell University Press.
  8. eBird (2024). eBird: An online database of bird distribution and abundance. Cornell Lab of Ornithology. https://ebird.org
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hachidori-zukan

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【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!