南米の真ん中に位置するパラグアイは、ブラジル、アルゼンチン、ボリビアに囲まれた内陸国です。
パラナ川とパラグアイ川という二つの大河が、この国の自然と文化を形づくっています。
この国では、約20種のハチドリが確認されています。
アマゾンの湿潤な森、セラード(サバンナ)、チャコ(乾燥地帯)といった生態系が交わることにより、驚くほど多様なハチドリたちが共存しているのです。
では、どんな環境が彼らを育んでいるのでしょうか。
パラグアイの地理と自然環境
南米の地理的な十字路
パラグアイは南米の中央部に位置するため、北のアマゾン的な湿潤環境から、西の乾燥チャコ地帯、南の温帯気候まで、さまざまな自然が入り混じります。
この「生態系の交差点」であることが、ハチドリたちの多様性を生む大きな要因です。
二つの大河:生命をつなぐ血管
パラグアイ川は国を南北に流れ、広大な湿地や川沿いの森(リパリアン生態系)を形成しています。
一方、パラナ川はアルゼンチンとの国境を南東に沿って流れ、豊かなギャラリー林(川沿いの森林)を育みます。
これらの川沿いでは、ハチドリが花の蜜を求めて飛び交う姿がよく見られます。
三つの主要な生態系
・東部:大西洋岸熱帯雨林
一年を通して雨が多く、パラグアイのハチドリの多くが集中するエリアです。
・中央部:混合生態系地帯
湿った東と乾燥した西の間にあり、特に生物多様性が高い地域です。
・西部:チャコ乾燥地帯
乾燥に適応した植物が多く、ハチドリの数はやや少なめです。
大西洋岸熱帯雨林の危機
東部の大西洋岸熱帯雨林は、かつてハチドリたちの楽園でした。
しかし今では97%が農地や牧草地に変わり、原生林はわずかしか残っていません。
これはパラグアイのハチドリにとって、最も深刻な脅威です。
パラグアイの特徴的なハチドリ3種
ツバメハチドリ(Swallow-tailed Hummingbird)
学名:Eupetomena macroura
パラグアイで最もよく見られる種の一つ。
東部の湿潤地から中央部まで広く分布します。
深く二股に分かれた長い尾が特徴で、オスは体長約19cmに達します。
縄張り意識が非常に強く、自分より大きなハチドリを追い払うこともあるほどです。
ムナグロマンゴーハチドリ(Black-throated Mango)
学名:Anthracothorax nigricollis
全身は光沢のある緑色で、オスの喉が黒く輝くのが特徴です。
開けた環境を好み、都市の庭園でも見られることがあります。
ツバメハチドリに比べるとややおとなしい性格ですが、花の種類を選ばず訪れるため、受粉において重要な役割を果たしています。
クロハチドリ(Black Jacobin)
学名:Florisuga fusca
パラグアイでは比較的まれで、主に北東部の熱帯林に分布します。
黒みを帯びた羽色はハチドリとしては珍しく、光の角度によって紫や青にも見えます。
ブラジル側から分布を広げつつあり、気候変動によって生息域が拡大していると考えられています。
パラグアイのハチドリが直面する脅威
森林破壊:最も深刻な問題
大豆栽培や牧畜の拡大により、熱帯雨林の97%が失われました。
分断された森では、ハチドリの繁殖や移動が難しくなっています。
農薬の影響
ハチドリのヒナは、成長のために小さな昆虫を必要とします。
農薬によって昆虫が減ると、ヒナの生存率が下がってしまいます。
気候変動による影響
冬の低温や降水パターンの乱れは、花の開花時期を狂わせ、ハチドリの採餌リズムを崩すおそれがあります。
保全と未来への取り組み
自然保護区による保全
大西洋岸熱帯雨林の一部は自然保護区として守られています。
これらのエリアが、ハチドリの生息集団をつなぐ重要な「緑の回廊」となっています。
国際的な協力
大西洋岸熱帯雨林は、ブラジル・アルゼンチン・パラグアイの三国にまたがっています。
生息地を守るには、国境を越えた保全活動が不可欠です。
地域と共に進む保全
地域の農家が植樹や観察活動に参加するなど、住民主体のエコ活動が広がりつつあります。
こうした草の根の努力が、パラグアイの未来を支えています。
まとめ:南米中央部の生命が交わる場所
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 確認されているハチドリの種数 | 約20種 |
| 主な生態系 | 熱帯雨林・チャコ乾燥地帯・サバンナ |
| 熱帯雨林の減少率 | 約97% |
| 代表的な種 | ツバメハチドリ、ムナグロマンゴーハチドリ、クロハチドリ |
| 主な脅威 | 森林破壊・農薬・気候変動 |
| 保護の動き | 自然保護区・国際協力・地域参加型保全 |
パラグアイは、南米の多様な生態系が出会う場所。
そこに生きるハチドリたちは、花と森をつなぐ小さなメッセンジャーです。
彼らの未来を守ることは、南米全体の生物多様性を守ることでもあるのです。
参考文献
- List of birds of Paraguay – Wikipedia.
- FAUNA Paraguay. “Checklist of the Birds of Paraguay.”
- Avibase Bird Checklists of the World. “Paraguay.”
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

