樹冠とは

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森林の最上層を形づくる枝葉の集合を樹冠といいます。
樹冠は英語で「canopy」または「crown」と言い、canopyは特に森林全体を覆う葉の層を指すことが多く、crownは個々の木の枝や葉が集まった部分を指します。

多くの着生植物や動物が暮らす、生態系の主要な生活空間でもあります。

由来・概要

「樹冠」という言葉は、もともと「覆い」や「王冠」を意味する語から生まれました。
聖なるものを守る布のように、森の上を覆うイメージです。

かつては単に「最上層の植物群」として扱われていましたが、現在では葉や枝だけでなく、そこに住む動植物や微生物、そして空間や光・湿度などの環境条件まで含む複雑な生態系として定義されています。

樹冠層は多くの樹木の枝葉が触れ合い、森全体を覆うように連続する層を形成します。
森林を垂直方向に分ける層の中でも、最上部に位置する重要な帯です。
ここは太陽光を最も多く受け取り、森の屋根として環境を支えています。

特徴

樹冠層は優占種や亜優占種の高木によって構成され、上には突出木、下には亜樹冠層や林床が続きます。
日光が豊富で光合成が活発に行われ、森林の一次生産の大部分を担っています。
太陽光のうち、下層に届くのはわずか50%ほど。熱帯雨林では樹冠が日光の約95%を遮るとも言われます。

また、樹冠は降雨を受け止めて蒸発させることで、林内の湿度や水分循環を調整します。
葉に当たった雨は幹を伝って地表へと流れ、強風や豪雨から下層を守る働きもあります。

この層には地上では見られない固有の生物が多く生息しています。
科学者は、森林に暮らす生物の60〜90%が樹冠に依存していると推定しています。

ハチドリとの関わり

ハチドリは熱帯雨林の樹冠に咲く花を渡り歩き、蜜を採取します。
日光を浴びながら羽ばたくその姿は、森の最上層に輝く宝石のようです。

樹冠はハチドリにとって主要な採餌場所です。
彼らは一日中飛び回り、10〜15分おきに蜜を摂取します。
高エネルギーを維持するため、体重の数倍の蜜を1日に消費することもあります。

チャイロハチドリのように樹冠で単独行動する種もいれば、シロアシラケットハチドリのように林床から樹冠まで幅広く利用する種もいます。

また、ハチドリは樹冠に生える花の主要な送粉者です。
花粉を運びながら蜜を吸うことで、植物の繁殖を助けています。
季節や開花木の分布によって、ハチドリの移動や活動範囲が変わるのも特徴です。

生態系サービス

樹冠は地球規模の炭素循環を支える層でもあります。
森林による二酸化炭素の吸収の大半がここで行われ、温暖化の抑制に寄与しています。
光合成により酸素を放出し、水分を蒸散して大気中に送り出すことで、雲の形成や降雨パターンにも影響を与えます。

また、樹冠は「森の傘」として働き、下層を気候変動や物理的ストレスから守ります。
降雨の勢いを弱め、土壌流出を防ぎ、温度や湿度を一定に保つ機能もあります。

近年では、樹冠に生息する生物の多様性を理解することが、森林保全や気候変動対策に欠かせないと考えられています。

ポイント

  • 森林の最上層を形成する枝葉の層
  • 光合成を支え、一次生産の中心となる場所
  • 日光の50〜95%を遮り、下層の環境を調整する
  • ハチドリの主要な採餌・送粉活動の場
  • 地球規模の炭素循環と気候安定に寄与する

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WRITERこの記事の著者

hachidori-zukan

hachidori-zukan

【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!