分布とは、ある種類の生き物が特定の地域や環境の中で、どこに、どれくらいの数で存在しているかという、地理的な広がりや配置のパターンのことです。
これは生物学において、その生き物の生息域や、その地域での個体の集まり方を理解するための基本的な情報となります。
由来・概要
分布は、その生き物が持つ進化の歴史や、現在の環境への適応能力を示すものです。
生息域と分布域
「生息域」は、その生き物が実際に生活している場所や環境を指しますが、「分布域」は、その生き物が地理的に存在しているすべての範囲を指します。
分布域の広がりは、その種の移動能力や、気候、地形などの環境条件によって決まります。
分布を決める要因
ある生き物の分布を決定する主な要因は、次の二つです。
- 歴史的な要因: 過去の進化の歴史や大陸移動、氷河期など、種が移動できたかどうかの歴史的経緯です。例えば、パンダのように、かつて広い地域に分布していた種が、現在では限られた地域にしか残っていないことがあります。
- 生態的な要因: 現在の環境への適応性です。気温、水、食べ物の有無、そして天敵や競争相手の存在など、生存に必要な条件が整っているかどうかが影響します。
特徴
分布のパターンには、大きく分けて三つの基本的な型があり、その種の生態的な特徴を反映しています。
分布の三つのパターン
- 集中分布(しゅうちゅうぶんぷ):個体が特定の資源の周りに集まって存在しているパターンです。群れを作る動物や、特定の場所にしか蜜源がないハチドリなどに見られます。
- 一様分布(いちようぶんぷ):個体どうしが一定の距離を保ち、規則的に並んでいるパターンです。強い縄張りを持つ動物や、植物のプランテーション(人工林)などで見られます。
- ランダム分布:個体がランダムに不規則に散らばっているパターンです。資源がどこにでもあり、個体どうしの競争や引力が弱い場合に発生します。自然界では比較的珍しいです。
ハチドリとの関わり
ハチドリは、アメリカ大陸にのみ生息しており、その多様な種がそれぞれ異なる分布域を持っています。
地理的な分布
ハチドリの分布域は非常に広く、南米のチリ南部から北米のアラスカ南部まで及んでいます。
しかし、種の多様性は熱帯域(特にアンデス山脈の雲霧林)で最も高くなっています。
縄張りによる集中分布
ハチドリの個体レベルの分布を見ると、蜜源(みつげん)が豊富な特定の場所や、人工の餌場をめぐって強い縄張りを持つ種が多くいます。
これにより、その場所の周辺で個体が密集する集中分布のパターンを示すことがよく観察されます。
用語深掘り:生物地理学と分布
分布の研究は、「生物地理学」という学問分野の中核をなしています。
固有種(こゆうしゅ)の分布
特定の限られた地理的な地域にしか分布しない種を「固有種」と呼びます。
例えば、ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチや、オーストラリアのコアラなどが有名です。
固有種の分布域は狭いため、生息域の破壊や気候変動の影響を受けやすく、絶滅危惧種となるリスクが高いという特徴があります。
分布拡大の限界
種が本来の分布域の外側へ広がるのを阻む要因を「バリア」と呼びます。
大きな山脈、砂漠、海などの地理的な障壁のほか、その種の耐えられない極端な気温や、必要な食料の欠如といった環境的な障壁も、分布の限界を定めます。
ポイント
- 分布は、ある種が地理的にどこに、どれくらいの数で存在しているかという広がりや配置のパターン
- 歴史的要因と生態的要因によって分布は決定されます
- 分布のパターンには、集中分布、一様分布、ランダム分布の三つがあります
- ハチドリは、南北アメリカ大陸に広く分布しますが、蜜源をめぐる縄張り行動によって集中分布のパターンを示すことがあります
- 固有種は分布域が狭く、絶滅の危険性が高いです
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hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

