渡りとは、鳥などの生き物が、食べ物や繁殖などの環境の変化に対応するために、毎年決まった季節に、住む場所を遠い距離にわたって移動することです。
移動する鳥を「渡り鳥」と呼び、移動せずに一年中同じ場所にいる鳥を「留鳥(りゅうちょう)」と呼びます。
渡り鳥にとって、この移動は命がけの旅となります。
由来・概要
生き物が渡りを行う最大の目的は、生存と子孫を残すことを有利に進めるためです。
渡りの理由
渡り鳥は、季節によって最も適した場所を使い分けています。
- 食べ物の確保: ツバメのように、夏に日本で昆虫を食べて子育てをしますが、冬になると昆虫がいなくなるため、暖かい南の国へ渡ります。逆に、ハクチョウやカモなどの冬鳥は、日本の夏が暑すぎたり、北の繁殖地の方が食べ物が多く、競争相手が少ないために北へ戻ります。
- 繁殖と子育て: 多くの場合、食べ物が豊富で、天敵から身を守りやすい地域を選んで子育てを行います。
渡り鳥の種類(日本を基準とした場合)
- 夏鳥(なつどり): 春に南から渡ってきて日本で子育てをし、秋に南へ帰る鳥です。ツバメやカッコウなどが代表的です。
- 冬鳥(ふゆどり): 秋に北から渡ってきて日本で冬を過ごし、春に北へ帰る鳥です。ハクチョウやカモなどが代表的です。
- 旅鳥(たびどり): 北の繁殖地と南の越冬地を往復する途中で、春と秋に日本に立ち寄る鳥です。シギやチドリの仲間などが代表的です。
特徴
渡りは、その距離の長さや、方向を知る能力など、驚くべき特徴を持っています。
長距離の移動
渡り鳥の中には、キョクアジサシのように北極圏と南極圏を毎年往復するなど、地球をほぼ半周するような大規模な移動をする種もいます。
道案内(ナビゲーション)の能力
渡り鳥は、生まれながらにして、渡りの方向を知る能力を持っていることがわかっています。
太陽の位置や、夜は星座、そして地球の磁気(じき)などを手がかりにして、何千キロも離れた目的地まで迷わずにたどり着きます。
渡りの合図
鳥たちは、季節の変化、特に昼の時間の長さが変わることを刺激として感知します。
この光の信号が脳に伝わり、ホルモンの量が調節されて、渡りの準備を始めます。
ハチドリとの関わり
ハチドリは熱帯に住むイメージがありますが、北米に分布する一部の種は、驚くほど長い距離を渡ることで知られています。
ノドアカハチドリの長距離移動
北米に生息するノドアカハチドリは、春にカナダやアメリカ南部で子育てをし、冬になるとメキシコ湾を越えて暖かいメキシコや中米へ渡ります。
この渡りのルートには、メキシコ湾を約800キロメートルも休まずに飛び続ける区間があります。
渡りのための準備
この長距離の飛行に備えるため、ノドアカハチドリは渡りの前に大量に食べ物を摂取し、自分の体重がほぼ二倍になるほど脂肪を蓄積します。
この脂肪が、海の上での継続飛行に必要なエネルギー源となります。
用語深掘り:渡りの中継地と保護
渡り鳥の生存には、繁殖地と越冬地だけでなく、その途中で立ち寄る中継地の環境保全が欠かせません。
重要な中継地
渡りの途中で鳥たちが休憩し、エネルギーを補給するために立ち寄る場所を中継地と呼びます。
特に水辺の環境(湿地や干潟など)は、シギやチドリなどの渡り鳥にとって、一時的な食料源となるため非常に重要です。
国際的な保護の必要性
渡り鳥は国境を越えて移動するため、一国だけの努力では守りきれません。
繁殖地、中継地、越冬地それぞれの国々が協力し、環境を保護する国際的な取り組みが行われています。
ポイント
- 渡りは、生き物が食べ物や子育てのために、決まった季節に長距離を移動することです
- 日本を基準に、夏鳥、冬鳥、旅鳥などに分けられます
- ノドアカハチドリは、渡りのために体重を大きく増やしてメキシコ湾を休まずに渡ることで知られています
- 渡り鳥を守るためには、繁殖地、越冬地、中継地の国際的な協力による環境保全が重要です
関連用語リンク
- 集中分布(しゅうちゅうぶんぷ)
- 絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

