シエラネバダ・デ・サンタマルタ(Sierra Nevada de Santa Marta)は、コロンビア北部のカリブ海沿岸にそびえる独立した山塊です。
海からわずか42kmの距離で標高5,700mに達する、世界で最も高い海岸山脈として知られています。
スペイン語で「サンタマルタの雪をいただく山脈」を意味し、アンデス山脈から地理的に分離した独自の存在です。
由来・概要
この山地は約1,700万平方kmに及ぶ三角形の山塊で、最高峰はピコ・クリストバル・コロンとピコ・シモン・ボリバル(ともに標高約5,700m)です。
アンデスから独立して形成されたこの山脈は、マグダレナ県、セサール県、ラ・グアヒラ県にまたがり、36本以上の河川を生み出しています。
海抜0mから5,700mまでの劇的な標高差により、熱帯から高山までの全気候帯をわずか42kmの範囲で見ることができます。この急峻な垂直構造が、世界でも稀な多様な生態系を育んでいます。
特徴
地質的には、過去6,600万年にわたるプレートの衝突と隆起により形成されました。アンデス山脈の一部が回転・分離して現在の位置に移動したと考えられています。
この地帯には、海岸の乾燥林から高山の氷雪帯まで、標高ごとに異なる植生帯が広がります。
雲霧林には着生植物やつる植物が密生し、3,000種以上の植物と440種以上の鳥類が記録されています。そのうち20種ほどが固有鳥類であり、固有ハチドリも7種確認されています。
ハチドリとの関わり
シエラネバダ・デ・サンタマルタは、ハチドリの進化研究において世界的にも重要な地域です。
海岸の乾燥林から山地の雲霧林、高地のパラモ草原まで、環境の変化が明確であるため、ハチドリたちは標高帯ごとに異なる植物と共進化してきました。
この山塊が長い地質的隔離の中で独立していたことが、固有ハチドリ種の誕生を促したと考えられています。花粉媒介者としての役割も大きく、山全体の生態系バランスを支えています。
先住民族の世界観
この山は、アルアコ族、コギ族、ウィワ族、カンクアモ族の四つの先住民族にとって「世界の心臓」と呼ばれる聖域です。
彼らは自然のすべてが霊的に結びつくと考え、山そのものを宇宙の中心とみなしています。
また、タイロナ文明の遺跡「失われた都市(シウダー・ペルディーダ)」は、自然と人間の共存の象徴とされ、文化的にも高い価値を持ちます。
彼らの伝統的知識は、現代の環境保全においても重要な視点を与えています。
ポイント
・世界で最も高い海岸山脈(標高5,700m)
・熱帯から氷雪帯までの垂直的な生態系が凝縮
・7種の固有ハチドリと440種以上の鳥類が生息
・先住民族にとっての精神的・宇宙的中心地
・鉱業・開発による環境破壊が深刻化している
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hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

