亜種(あしゅ)とは

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亜種とは、同じ「種」に属しながらも、住む地域によって形や性質が少しずつ違う集団のことです。
英語では「Subspecies」と呼ばれます。

見た目や行動は違っても、交配すれば子どもを残すことができます。
つまり、完全に別の種ではなく「地域ごとの違いがはっきりした仲間」といえます。

由来と概要

亜種は、分類学上では「種」のすぐ下に位置する階級です。
動物学では、正式な名前を持てる最も下の分類単位でもあります。

すべての生き物に亜種があるわけではなく、地理的に分かれた複数の集団が見られるときにだけ、亜種として認められます。

この考え方は国際的な命名規約によって定められ、学問的にも明確に扱われています。

亜種が生まれる理由と特徴

亜種が生まれる一番の理由は「地理的な隔離」です。
山や海、気候の違いなどによって生き物の集団が長く分かれると、それぞれの環境に少しずつ適応していきます。
こうした地域ごとの変化が積み重なって、見た目や行動が異なる集団になります。

ただし、亜種同士は完全に別の種ではありません。交配すれば子どもを残せます。
このため、亜種は「種分化の途中段階」ともいわれます。
将来的に別々の種へ進化していく可能性を持っている存在です。

形態と遺伝の違い

亜種の判断には、見た目と遺伝の両方が使われます。
体の大きさ、羽の色、模様、鳴き声、行動パターンなど、はっきりした特徴があるかどうかが重要です。

研究では、これらの違いを形態学的特徴として比較し、さらにDNAの分析で裏づけます。
つまり亜種とは、明確な境界を持つ「地域ごとの顔つきの違う集団」なのです。

命名法と表記のルール

生物の名前は、通常「属名+種名」の二つで表されます(これを二名法といいます)。
亜種の場合はさらに一つ名前が加わり、「属名+種名+亜種名」という三名法になります。

たとえばトラの場合、種名は「Panthera tigris」。
そのうちスマトラ島に生息するトラは「Panthera tigris sumatrae」と表記されます。

最初に記録された個体群は「基亜種」と呼ばれ、種名と亜種名が同じになります(例:Panthera tigris tigris)。
この表記はすべてイタリック体で書くのが正式です。

ハチドリに見る地域適応

ハチドリの中にも、亜種の違いがはっきり見られます。

たとえばアレンハチドリには、同じ種の中に「渡りをする亜種」と「渡りをしない亜種」がいます。
見た目の違いはわずかですが、行動パターンが大きく異なります。
渡りをしない亜種はもともと島にすみついており、そこから本土に広がったと考えられています。

このように、地理的な隔離や環境の違いが亜種を生み出し、やがて種分化へとつながっていくのです。

亜種の保全と重要性

亜種の認識は、生物保全において非常に重要です。
国や地域によっては、絶滅危惧種法が亜種にも保護を適用します。
亜種を守ることは、地域に特有の遺伝子を守ることでもあり、将来の進化の可能性を残すことにつながります。

気候変動のような環境の変化に対応するには、遺伝的な多様性が欠かせません。
そのため、亜種の多様性を保つことは、種全体の強さを守ることでもあります。
一見わずかな違いのように見えても、その差が未来の適応力を決定づけるのです。

ポイント

  • 亜種は「種」の下にある分類階級
  • 地理的隔離によって生まれる地域ごとの変異集団
  • 交配が可能で、種分化の初期段階とされる
  • 学名は三名法で表記される(例:Panthera tigris sumatrae
  • ハチドリなどでも地域適応による亜種が確認される
  • 亜種の保全は生物多様性の維持に不可欠

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WRITERこの記事の著者

hachidori-zukan

hachidori-zukan

【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!