隔離分布(かくりぶんぷ)とは

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「隔離分布」とは、生きものの集団が、本来つながって暮らせるはずの地域から切り離され、遠く離れた場所に飛び飛びで分布している状態を指します。英語では「Disjunct Distribution」と呼ばれます。

つまり、一続きの生息域が途中で途切れ、別々の地域に取り残されたり、新しい土地に移り住んだりした結果です。

由来・概要

この現象は、長い地球の歴史の中でたびたび起きてきました。
氷河期や温暖期のような気候の変化、大陸の移動、海面の上昇などが原因で、生息地が分断されることがあります。

隔離分布は、見た目が似ていても離れた地域にしかいない種がいる理由を説明する重要な手がかりになります。

残存型(ざんぞんがた)の隔離分布

かつては広い範囲に分布していた生きものが、環境の変化によって住める場所を失い、一部の地域にだけ取り残された場合を指します。

たとえば、氷期の寒冷な時代に広がっていた植物が、温暖化の後に高山や北の地域だけで生き残る例があります。これらは「遺存種(いぞんしゅ)」とも呼ばれます。

また、大陸の分裂や火山活動など、地殻の変動で生息地が分かれることもあります。

散布型(さんぷがた)の隔離分布

こちらは、逆に生きものが新しい土地へ移動し、そこに定着した結果として分布が飛び飛びになったものです。
風や海流、鳥などが運ぶ力を借りて、遠く離れた場所へ種や個体が運ばれることがあります。

ハワイやガラパゴスの固有種の多くは、このような「散布型隔離分布」で誕生しました。
少数の祖先が島にたどり着き、そこで新しい環境に適応して進化したのです。

進化と分類の重要性

隔離分布は、生物がどのように進化してきたかを理解するうえで欠かせません。
分断された集団は、互いに交配できなくなるため、それぞれの環境に合わせて独自の進化を遂げやすくなります。
その結果として、時間がたつと亜種や別種が生まれることがあります。

また、隔離分布のパターンを比較することで、共通の祖先がいつどこに生息していたかを推定する手がかりにもなります。

ハチドリとの関わり

ハチドリは、優れた飛行能力を持つため、隔離分布の形成に関わる代表的なグループです。

たとえば、南米に由来する祖先が中米や北米へと広がったのは、海や山などの障壁を越えて散布した結果と考えられています。

また、カリフォルニア州のアレンハチドリのように、渡りをする集団と、同じ地域にとどまる留鳥の集団が存在します。
このような分離は、長い時間の中で遺伝的な違いを生み、亜種分化を促す要因となっています。

生態系と保全の視点

隔離分布を示す生物は、限られた環境にしか生きられないことが多く、環境変化に弱い傾向があります。
そのため、山頂や島など、狭い範囲にしかいない集団が絶滅すると、遺伝的多様性が大きく失われる危険があります。

隔離分布の理解は、こうした貴重な集団を守るためにも重要です。
過去の地理的変化や進化の過程をたどることは、将来の保全計画にも役立ちます。

ポイント

  • 隔離分布は、生物が飛び飛びの地域に生息している状態
  • 原因は、環境変化による「残存型」と、長距離移動による「散布型」に分けられる
  • 隔離は遺伝的な交流を断ち、亜種や新しい種の誕生を促す
  • ハチドリの進化や分布の広がりも、隔離分布の影響を受けている
  • 保全上も、隔離された小さな集団の存在は重要な意味を持つ

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WRITERこの記事の著者

hachidori-zukan

hachidori-zukan

【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!