「乾季」とは、年間の気温変動が小さい熱帯や亜熱帯地域で、降水量が極端に少なく乾燥が続く時期を指します。
雨季と対をなす季節で、植物が落葉し、動物が水や食料を求めて移動するなど、環境への適応が顕著に現れます。
発生原因と気候的特徴
乾季は、地球規模の大気循環と季節風(モンスーン)の作用によって発生します。
特にサバナ気候や熱帯季節風気候で顕著に見られます。
・熱帯収束帯(ITCZ)の移動
太陽の南中高度が変化すると、湿潤な空気をもたらす熱帯収束帯が地域から離れ、乾燥した高圧帯の影響下に入ります。これが乾季の主因です。
・季節風(モンスーン)
冬季、大陸が冷却されると、内陸から乾燥した風が海洋へ向かって吹き出し、乾燥を強めます。
・植生の変化
乾季の間、草原の草は枯れ、樹木は水分蒸発を防ぐため落葉します。これにより、広大なサバナや雨緑林特有の景観が形成されます。
地中海性気候でも、夏季に亜熱帯高圧帯に覆われることで乾季が現れます。
生態系への影響
乾季は、生物にとって最も厳しい環境期です。
水が枯渇し、河川や湖が干上がると、動物はわずかな水場へ集中します。
アフリカのヌーやシマウマの大移動はその典型例です。
植物は落葉して蒸散を抑え、草本類は種子として休眠します。地中に根茎や球根を残す植物は、雨季の再来を地下で待ちます。
一方、両生類や爬虫類、昆虫などは泥の中で「夏眠」して乾燥を耐えます。乾季は、生命の活動を一時的に止めて環境変化に備える「静の季節」でもあります。
ハチドリとの関わり
乾季はハチドリにとって最も過酷な時期です。
花が減り蜜源が乏しくなるため、栄養不足に陥りやすくなります。
彼らは夜間や餌の少ない時間帯に、体温と代謝を下げる「休眠(トーパー)」状態に入り、エネルギーを節約します。
また、昆虫を捕食して不足する栄養を補うなど、食性を柔軟に変化させます。
乾季でも水と花が保たれる拠水林や雲霧林は、ハチドリにとって重要な避難所です。
一部の種は、花が残る標高帯や湿潤地帯へ垂直・水平移動して生存をつなぎます。
ポイント
- 乾季は、熱帯・亜熱帯で降水が少なくなる時期。
- 発生要因は熱帯収束帯の離脱や季節風の影響。
- 植物は落葉や休眠、動物は移動や夏眠で適応する。
- ハチドリは蜜源不足を、トーパーや移動で乗り越える。
関連用語リンク
- 雨季(うき)
- 熱帯収束帯(ITCZ)
- サバナ気候
- モンスーン
- 休眠(トーパー)
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hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

