エコトーンとは

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「エコトーン」とは、二つの異なる生態系や環境が接し、連続的に移行している帯状の部分を指します。

森林と草原の間、陸域と水域の境界など、環境条件が徐々に変化する「推移帯」がこれにあたります。
隣接する両方の特徴を合わせ持つため、生物多様性が特に高くなるのが大きな特徴です。

由来・概要

語源はギリシャ語で「家」を意味する「oikos(エコス)」と、「緊張・張力」を意味する「tonos(トノス)」から成ります。
つまり、異なる生態系が接して互いに張り合いながらも調和している場所という意味です。

エコトーンは「境界線」ではなく、環境要因(水分、光、温度、土壌など)が連続的に変化する帯状の空間を指します。
たとえば以下のような例があります。

・河畔林:川と陸地の接する帯状の森林。洪水を和らげ、水質を守る役割を持つ。
・湿地:陸地と湖沼の中間的環境。水位や冠水頻度が時期によって変化する。
・森林限界:亜高山帯の針葉樹林と高山帯の低木群落が接する部分で、標高に伴う垂直的なエコトーン。

特徴:エッジ効果と多様性

エコトーンでは「エッジ効果」と呼ばれる現象が見られます。
これは、隣接する2つの生態系それぞれの生物に加え、その中間環境に適応した独自の種も存在するため、結果的に種の多様性が最大化されるというものです。

例えば、森林の鳥と草原の鳥の両方が利用できる環境では、食物・営巣場所・捕食回避などの選択肢が広がります。その一方で、異なる生態系の種が混在するため、競争や捕食の関係も複雑になります。

さらに、エコトーンは景観的にも機能的にも重要です。
密な植生は動物にとって隠れ家や移動回廊(エコロジカル・コリドー)となり、また陸域から水域への土砂や汚濁物質をろ過する「緩衝帯」としても働きます。

ハチドリとの関わり

エコトーンはハチドリにとって理想的な採餌・営巣環境です。
森林と草原の境界などでは、日当たりを好む花と日陰を好む花が共存し、蜜源が豊富になります
。ハチドリは季節や時間帯、標高に応じて蜜を選び取るため、花の種類が多い環境はとても効率的です。

また、林縁部の密な植生は外敵から身を守るのに適しており、巣を守りながら近くの花を訪れることができます。つまりエコトーンは、採餌効率と安全性を兼ね備えた「戦略的な生活空間」と言えます。

生態系サービスと保全のポイント

エコトーンは生物多様性の維持だけでなく、災害の緩和や資源循環にも関与する重要な生態系サービスを担います。

・水質浄化:河岸や湿地の植生が汚濁物質を吸収・分解し、下流の水質を保つ。
・浸食防止:根が土壌を固定し、洪水や波浪による岸の崩壊を防ぐ。
・気候緩和:高い植物多様性が微気候を安定させ、乾燥や温度変化を緩和する。

ただし、人工的な開発によって境界が直線化されると、自然なエコトーンの幅が失われ、エッジ効果も低下します。生物の移動や多様な環境利用を維持するには、なだらかで自然な遷移構造を残すことが重要です。

ポイント

  • エコトーンは「境界」ではなく「連続的な変化帯」である。
  • 多様な生物が共存し、エッジ効果によって種数が増す。
  • 水質浄化や浸食防止などの環境機能を担う。
  • ハチドリにとっては蜜源と安全性を兼ね備えた重要な環境。
  • 人工化による境界の単純化は、生物多様性の損失につながる。

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WRITERこの記事の著者

hachidori-zukan

hachidori-zukan

【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!