森林分断とは、つながっていた大きな森林が、道路や農地などによって小さく分かれてしまう現象のことです。英語では「Forest Fragmentation」と呼ばれます。
森がバラバラの小島のように孤立してしまうことを指します。
由来・概要
森林分断は、生息地分断の一つです。
自然の変化だけでなく、人間の開発によって起こることが多いです。
もともと一続きだった森林が、道路や農地、町などによって切り離され、複数の小さな区画に分かれます。
残された森林の間には、農地や住宅などの「マトリックス」と呼ばれる空間が広がり、動物たちが行き来しにくくなります。
島嶼生物地理学の考え方で説明されることが多く、森の断片は「陸の島」のように扱われます。
時間がたつと分断が広がり、より多くの地域で森林が小さく、孤立していきます。
特徴
現在、地球上の森林の半分以上が、森の端から500メートル以内にあるといわれています。
これは、多くの森が小さく切り取られ、分断化が進んでいることを示しています。
小さくなった森では、湿度が下がり、気温や風が変わる「林縁効果」が起きます。
これにより、火災が起こりやすくなったり、外来種が入り込みやすくなります。
さらに、分断化は森林の質を下げ、生物多様性を13〜75%も減らす可能性があります。
森林のバイオマス(生き物の重さ)や養分の循環が失われ、森全体の機能が弱まります。
道路建設や皆伐、農地開拓などが主な原因で、特に熱帯林では、大木が減り、若い木が増える傾向が見られます。
ハチドリとの関わり
森林の分断は、ハチドリの行動にも大きな影響を与えます。
熱帯の農業地帯では、ハチドリが森の中をまっすぐ移動せず、開けた土地を避けて飛ぶ傾向があります。
研究では、農業地帯のハチドリが最短距離よりも36%多くの森林を経由して移動していることがわかっています。
また、分断化によって植物との関係が変化し、ハチドリが運ぶ花粉の種類が減ります。
専門性の高いハチドリが減り、より一般的な種が増える傾向があります。
たとえばホンジュラスエメラルドは、乾燥林の分断によって生息地の90%を失い、絶滅の危機にあります。
一方で、アマゾンの一部のハチドリは、断片林や二次林でも生き延びられることが確認されています。
しかし多くの種では、移動や繁殖に必要なエネルギーが増え、個体数の減少を招いています。
生態系サービス
森林分断は、単に木が減るだけではなく、森が果たす多くの役割を弱めます。
炭素の吸収、栄養循環、水の保持などの生態系サービスが低下し、生物多様性も大きく損なわれます。
世界の森林の70%以上は、森の縁から1キロメートル以内にあり、分断化による劣化の影響を受けています。
特に小さく孤立した森ほど被害が深刻で、時間が経つほど回復が難しくなります。
保全のためには、分断された森をつなぐ「森林回廊」や緩衝帯の設置が重要です。
ただし、再接続には慎重な計画が必要で、新たな問題を生まないよう注意しなければなりません。
世界各地で、森の連結性を回復する取り組みが進められています。
ポイント
- つながった森が小さく分かれる現象
- 主な原因は道路建設や農地開拓などの人間活動
- 生物多様性を最大75%減らす深刻な影響
- ハチドリの移動や植物との関係を変化させる
- 森林回廊の整備が保全に不可欠
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WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

