「地衣類」とは、「菌類」と「藻類(またはシアノバクテリア)」という異なる生物が、互いに助け合って生きる不思議な共生体です。
菌類が体の構造を作り、藻類が光合成で栄養を作るという協力関係で成り立っています。
岩や木の幹、地面、屋根の上など、地球上のあらゆる場所に見られます。
由来・概要
地衣類の正体は、二つの生物が共に生きる仕組みにあります。
菌類(マイコビオント)は外側の構造を作り、水分を保持し、藻類を守ります。
一方、藻類やシアノバクテリア(フォトビオント)は光合成を行い、糖分を作って菌類に供給します。
どちらかが欠けても生きられない、極めて密接な共生関係です。
特徴と生存戦略
地衣類は、他の生物が生きられない過酷な環境でも生存できます。
菌類の菌糸はスポンジのように水分を吸収し、乾燥すると休眠状態に入ります。雨や霧が降ると、再び活動を再開します。
この「仮死と再生」の繰り返しは、地球上でもっとも古い生命戦略の一つとされています。
また、地衣類の成長は極めて遅く、1年で1ミリ未満しか伸びないものもあります。
その代わり、数百年生きる個体も珍しくありません。
形態は多様で、葉のように広がる「葉状地衣」、岩や樹皮にぴったり張り付く「痂状地衣」、枝のように垂れ下がる「樹状地衣」などがあります。
それぞれが水分や光を最大限に利用できるよう進化してきました。
ハチドリとの関わり
地衣類はハチドリにとって、巣作りの材料として欠かせない存在です。
ハチドリは地衣類をクモの糸で巣の表面に貼り付け、周囲の木肌に溶け込ませます。
これにより、外敵から見つかりにくくなるカモフラージュ効果が生まれます。
地衣類は見た目の保護だけでなく、巣の柔軟性と強度を高める天然の素材でもあります。
強風に揺れる枝でも巣が壊れにくいのは、地衣類とクモの糸の絶妙な組み合わせによるものです。
生態系サービスと環境への貢献
地衣類は、自然界の「開拓者」として知られています。
岩の上に最初に定着し、分泌する酸で岩を少しずつ溶かし、そこに自らの死骸や有機物が積み重なることで「土壌の始まり」を作り出します。
地衣類がいなければ、多くの植物は根を下ろすことができません。
さらに、地衣類は大気汚染に非常に敏感です。二酸化硫黄などに弱いため、地衣類が豊富に生育している場所は空気が清浄である証拠です。都市部で地衣類が減少するのは、空気中の汚染物質が影響しているからです。
また、北極圏では、トナカイやカリブーが地衣類を主な冬の食料としています。菌類の体が持つ高い保水力は、周囲の湿度を保ち、微細な水循環にも寄与しています。
ポイント
- 地衣類は、菌類と藻類(またはシアノバクテリア)の共生体
- 乾燥や低温、高温にも耐える生命力を持つ
- ハチドリは巣のカモフラージュ材として利用する
- 岩を分解して土壌を作る「生態系の開拓者」
- 空気の清浄度を示す自然の指標でもある
関連用語リンク
- 菌類(きんるい)
- 藻類(そうるい)
- 着生植物
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

