リャノとは、南アメリカ大陸北部、主にベネズエラとコロンビアのオリノコ川流域に広がる広大な熱帯草原です。
スペイン語で「平原」を意味し、雨季と乾季がはっきり分かれるサバナ気候が特徴です。
地理・気候・生態系
リャノは、面積が約58万平方キロメートルにも及ぶ低平な地形で、標高は高くても300メートル程度しかありません。
地形は非常に平坦で、遠くまで見渡せる広大な地平線が続きます。
気候は一年を通して高温で、乾季と雨季が明確に交代します。
乾季(11月〜4月)は北東貿易風の影響で乾燥し、草原が枯れて赤茶けた大地が広がります。
雨季(5月〜10月)は降水量が増え、特に6〜8月には川が氾濫し、広大な地域が冠水します。
水が引かない地域では高地が島のように浮かぶ景観が現れます。
植生は主に長草型の草原で、ところどころにヤシや灌木が点在する「サバナ(疎林草原)」の景観を示します。乾季の終わりには一斉に芽吹きと開花が見られ、草原が生命力を取り戻す様子は壮観です。
人間の活動としては、自然条件の厳しさから人口は少ないものの、植民地時代から牛の放牧が盛んに行われてきました。
広い草原を自由に移動しながら家畜を管理する牧民は「リャネロ(Llanero)」と呼ばれ、この地域の象徴的な存在です。
ハチドリとの関わり
リャノは一面の草原が続くため、森林性のハチドリの多くは中心部には見られません。
しかし、その周辺部や河川沿いの樹林帯、アンデス山脈の山麓に近い地域では、多様なハチドリが確認されています。
リャノの河川沿いには「ギャラリー・フォレスト(拠水林/きょすいりん)」と呼ばれる細長い森林が形成され、そこではハチドリが花の蜜を求めて活発に飛び回ります。
特に乾季の終盤に開花する熱帯性植物が多く、限られた蜜源を求めてハチドリが集まるのです。
また、リャノの南東部はギアナ高地に近く、地形と気候の多様化によって固有種も見られます。
これらのハチドリは、季節的な花の変化に合わせて移動し、広域の受粉ネットワークを支えています。
山岳地帯との違い
アンデス山脈のような山岳地帯が垂直的な気候変化と高い種多様性をもつのに対し、リャノは水平的な広がりが特徴です。
標高が低いため寒冷な環境は見られず、乾湿の季節変化が生態系の主な要因となっています。
そのため、ハチドリのような特化した高山種は少ない一方で、乾燥に強く、季節に応じて移動する種が多く見られます。
生態系サービス
リャノは、自然と人間の生活を支える多くの生態系サービスを提供しています。
まず、水資源の調整機能があります。雨季に氾濫したオリノコ川は広大な地域に水を蓄え、乾季にゆっくりと放出することで下流域の水量を安定させます。
これにより、洪水防止と水資源の確保が両立されています。
次に、広大な草原はベネズエラやコロンビアの牧畜業を支える基盤です。
牛の放牧によって肉や乳製品が供給され、地域経済を支える食料供給サービスを担っています。
また、リャノに自生する植物や野生動物は、過酷な環境への適応を通じて独自の遺伝子を保持しており、将来的な農業改良や環境研究に資する遺伝資源としても重要です。
ポイント
- リャノはオリノコ川流域に広がる南米北部の広大な熱帯草原です。
- 雨季には冠水し、乾季には乾燥するという極端なサバナ気候が特徴です。
- 主に牛の放牧が行われ、牧民は「リャネロ」と呼ばれます。
- ハチドリは周辺の河岸林や山麓で生息し、植物の受粉に寄与しています。
- 水資源の調整や食料供給など、多様な生態系サービスを提供しています。
関連用語リンク
- サバナ気候
- オリノコ川
- リャネロ
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

