「棲み分け」とは、同じ地域に暮らす異なる種類の生きものが、限られた資源を奪い合う激しい争いを避けるために、生活の仕方を変えて共存することです。
英語では「Niche Differentiation」と呼ばれます。
お互いが少しずつ役割や得意分野をずらすことで、争わずに生きていく知恵と言えます。
由来・概要
自然界では、同じ資源を同じ方法で利用すると、どちらかが生き残れなくなります。
この現象を「競争的排除」と呼びます。
棲み分けはその結果を避けるための戦略で、複数の種が同じ場所で生き続けるための調整機構です。
言い換えれば、「少し違う生き方」を選ぶことで、自然界のバランスを保っているのです。
特徴
棲み分けの方法は主に三つあります。
空間的な棲み分け(どこで暮らすか)
生息場所や活動の高さを変える方法です。
例として、北米の森にすむ鳥たちは、ある種が木の外側で虫を探し、別の種は幹に近い場所で採餌します。
植物では、マングローブ林のように、潮の影響が強い場所と弱い場所に種が分かれて育つことがあります。
食性的な棲み分け(何を食べるか)
食べるものや食べ方を変えることで競争を避けます。
ダーウィンフィンチの仲間はその代表で、くちばしの形を進化させ、固い種子を食べる種と昆虫を食べる種に分かれました。
アフリカでは、シマウマが草の上部を、ヌーがその下部を食べるように棲み分けています。
時間的な棲み分け(いつ活動するか)
活動時間を変える方法です。
昼に活動するキツネと、夜に動くタヌキのように、同じ獲物を狙いながらも時間をずらすことで共存します。
ハチドリとの関わり
ハチドリは、蜜という限られた資源をめぐる争いが激しいため、棲み分けの好例が見られます。
長く曲がったくちばしをもつ種は、深い筒状の花から蜜を吸い、他の種が届かない花を独占します。
これが形態による棲み分けです。
また、標高の高い場所や蜜が少ない時期の花を利用することで、競争を避ける行動的な棲み分けも見られます。
生態系サービスとしての意義
棲み分けは、生態系の安定性と多様性を支える仕組みです。
もし棲み分けがなければ、強い種だけが生き残り、生態系は単調になります。
多様な種がそれぞれ異なる役割を担うことで、環境変化に強い、しなやかな生態系が維持されます。
ポイント
- 棲み分けとは、種どうしが争いを避けて共存する仕組み。
- 「どこで」「何を」「いつ」変えるかによって実現される。
- 競争的排除を回避し、生態系の多様性を支える。
- ハチドリは、くちばしの形や行動を変えることで蜜源を分け合っている。
関連用語リンク
- 競争的排除の原理
- 種間競争
- 共進化
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

