縄張りとは、動物の個体や集団が占有し、同種あるいは他種の侵入を物理的な行動や鳴き声、匂いなどの信号によって防衛する一定の地域のことです。
この行動は、テリトリーとも呼ばれ、資源の独占と個体の生存、繁殖を有利に進めるために行われます。
由来・概要
縄張り行動は、多くの脊椎動物や一部の昆虫に見られる社会的な制度の一つです。
日本語の「縄張り」という言葉自体は、古来、土地の所有権を示すために縄を張ったことに由来しています。
縄張りの機能
動物が縄張りを守る主な目的は、次の二つに大別されます。
多くの場合、両方の機能を兼ね備えています。
- 採餌縄張り(しょくじのなわばり): 食料源(餌や蜜源など)を独占し、安定的に食物を確保するために防衛されます。魚のアユやハチドリに見られます。
- 繁殖縄張り(はんしょくのなわばり): 配偶者を得るためや、巣作り、子育てを安定して行う場所を守るために防衛されます。鳥のライチョウやカワセミに見られます。
群れ戦略との対比
縄張り戦略は、個体が集合する群れ戦略と対照的な生存戦略です。
縄張り戦略では、個体が分散することで、限りある資源を分かち合うことを避け、自分の縄張り内の資源を独占することを目指します。
しかし、縄張りを維持するためには、常に侵入者を警戒したり、追い払ったりするエネルギー(労力)の出費が伴います。
特徴
縄張り行動は、動物にとって利益が不利益を上回るときにのみ形成されます。
縄張りには最適な大きさがあり、大きすぎると防衛の労力がかさみ、利益が打ち消されてしまいます。
防衛の方法
縄張りの防衛は、直接的な攻撃だけでなく、様々な信号を通じて行われます。
- 視覚的信号: 多くの鳥類や魚類が、派手な体色や誇示行動を見せて威嚇します。
- 聴覚的信号: 鳥のさえずりや犬の吠え声のように、鳴き声で自分の存在と縄張りの境界を主張します。
- 嗅覚的信号: 哺乳類(イヌやトラなど)が尿や分泌物をマーキングとして使い、縄張りの境界を知らせます。
ハチドリとの関わり
ハチドリは、その極めて高い代謝を維持するため、花の蜜というエネルギー源を安定的に確保する必要があり、縄張り行動を強く示します。
蜜源を守る縄張り
ハチドリは、特定の蜜源をそなえた植物の群落や人工の餌やり器の周辺に縄張りを構えることが知られています。
これは、典型的な採餌縄張りです。
- 攻撃的な防衛: 縄張り意識が非常に強く、他のハチドリだけでなく、大型の昆虫などの競合種に対しても激しく威嚇し、追い払います。小さな体にもかかわらず、大きな声で鳴いたり、急降下して追い立てたりする姿が観察されます。
- 縄張りを持たない種もいる: 特定の種類の花と共進化を果たし、長いくちばしを持つハチドリは、蜜量の多い花を長期にわたって周期的に利用するため、一つの場所に定住せず、広い範囲を飛び回る遊動型の採餌戦略をとることが多く、縄張りを持たない傾向があります。
用語深掘り:縄張りの経済性
縄張りを形成する動物は、縄張りを持つことによる利益と縄張りを維持するためのコストを常に比較しています。
これを「縄張りの経済性」と呼びます。
最適な縄張りの決定
食料の確保という利益は、縄張りが大きくなるにつれて増えますが、食べられる餌の量には限界があるため、どこかで増加が緩やかになります。
一方、防衛の労力というコストは、縄張りが大きくなるほど直線的に増加します。
動物は、この「利益とコストの差が最大になる」ように縄張りの大きさを調節します。
この最適な大きさこそが、その動物にとって最も有利な縄張りとなります。
ポイント
- 縄張り(テリトリー)は、動物が食料や繁殖場所を独占するために防衛する地域です。
- 主な機能は、採餌縄張りと繁殖縄張りに分けられます。
- 防衛には、攻撃行動の他に視覚、聴覚、嗅覚によるマーキングが用いられます。
- ハチドリは、蜜源を独占するために強い縄張り意識を持ちます。
- 縄張りは、利益がコストを上回る最適な大きさで維持されます。
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hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

