ウトリア国立公園は、コロンビア西部チョコ県にある国立公園です。
スペイン語で「Parque Nacional Natural Ensenada de Utría」、英語で「Utría National Natural Park」と呼ばれます。
1987年に設立され、太平洋岸の豊かな海洋・陸上生態系を保護しています。特にマングローブ林と熱帯雨林が共存する点が特徴です。
由来・概要
公園の名称は、北西部に位置するウトリア入り江(Ensenada de Utría)に由来します。
この入り江は海水が深く入り込んだラグーンで、灰色の砂浜とマングローブに囲まれています。
ウトリア国立公園は、チョコ県の太平洋岸に広がり、バイア・ソラノ、ヌキ、ボハヤ、アルト・バウド各自治体の一部を含みます。
面積は約5万4380ヘクタールで、陸地と海洋の両区域から成ります。
標高は海抜0メートルから1400メートルまであり、バウド山脈の一部を含みます。
公園内にはコンドト川、コンドティコ川、バジェ川などの豊富な水系が流れ、生態系の基盤を支えています。
特徴
ウトリア国立公園は世界でも有数の多雨地域として知られ、年間降水量は最大1万ミリメートルに達します。
平均気温は23〜30度で、年間を通じて温暖湿潤な気候です。
コロンビアに自生する10種のマングローブのうち7種がこの地域に分布しています。
沿岸には広大なマングローブ林が発達し、内陸部にはコイバ、コミノ、ニスペロなどの樹木が生育しています。
また、太平洋沿岸にはサンゴ礁も見られ、記録された16種のうち11種がウトリアで確認されています。
潮の干満によって景観が大きく変化し、満潮時には海洋生物、干潮時には陸生生物が活発に活動します。
ハチドリとの関わり
ウトリア国立公園は、ハチドリ観察に最適な地域の一つです。
約380種の鳥類が確認されており、そのうち複数種のハチドリがマングローブや熱帯雨林で観察されます。
特にフンボルトサファイアハチドリ(Chrysuronia humboldtii)はこの公園を代表するハチドリで、マングローブの花を専門的に訪れることで知られています。
低地から山地まで標高差が大きいため、異なる環境に適応した多様なハチドリが共存しています。
生態系サービス
ウトリア国立公園は、ザトウクジラの繁殖地として世界的に有名です。
クジラは6月から11月にかけて訪れ、特に8〜10月に出産が集中します。
ウトリア入り江は母クジラと子クジラにとって安全な環境を提供しています。
さらに、ヒメウミガメやオサガメ、タイマイ、アオウミガメなども営巣のため砂浜を訪れます。
海域では180種以上の魚類と81種の軟体動物が確認されており、ジンベエザメが見られることもあります。
陸上ではジャガーやピューマ、ナマケモノが生息し、爬虫類や両生類の多様性も高いです。
また、この公園はエンベラ先住民やアフロコロンビア人の伝統的領域と重なっており、地域社会によるエコツーリズムが活発に行われています。自然保護と文化継承の両立が進められている点も特徴です。
ポイント
- 1987年設立、面積約5万4380ヘクタールの国立公園
- 年間降水量が最大1万ミリメートルに達する世界屈指の多雨地域
- マングローブ、サンゴ礁、熱帯雨林が共存する複雑な生態系
- 380種以上の鳥類が生息し、フンボルトサファイアなどハチドリも豊富
- ザトウクジラとウミガメの繁殖地として国際的に知られる
- 先住民と地域社会が協働する持続可能なエコツーリズムのモデル地域
関連用語リンク
- チョコ県
- マングローブ林
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

