着生植物(Epiphyte)とは

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「着生植物」とは、土の中ではなく、他の木の幹や枝、岩などに付いて育つ植物のことです。
根を張ってはいますが、宿主から栄養を奪うわけではなく、あくまで足場として利用しています。

主に熱帯の湿った森に多く見られますが、高山の霧に包まれた森などでも見ることができます。

由来と概要

「着生植物」という言葉は、「着く」と「生きる」を合わせた言葉です。
英語では「Epiphyte(エピファイト)」といい、「上に生えるもの」という意味を持ちます。

代表的な種類にはラン科やシダ植物、ブロメリア(パイナップルの仲間)などがあります。
地面ではなく「空中で生きる植物」と言われることもあります。

特徴と生存戦略

着生植物は、土がなくても生きていけるように、いくつもの特別な能力を発達させています。
まず、自分で光合成をして栄養を作ります。宿主から養分を吸い取る寄生植物とは違い、独立して生活しています。

水分やミネラルは、雨や霧、空気中の湿気から取り入れます。
ランの仲間には「根被(こんぴ)」というスポンジ状の組織があり、空気中の水分を効率よく吸収します。

また、枝の間にたまった落ち葉やほこりが腐ってできる「腐植(ふしょく)」を利用して栄養を得る種類もあります。

生息環境

着生植物は、日光と湿気がほどよくある場所を選んで育ちます。
熱帯雨林では地面が暗いため、木の上に登って光を求めます。

雲霧林(うんむりん)と呼ばれる霧の多い山の森では、湿気が高く、水分を空気から取り入れやすい環境のため、着生植物が非常に多く見られます。
これらの植物は「森林の上層部」という空中の空間を活用し、森全体の立体的な多様性を支えています。

種類の多様性

世界には約3万種以上の着生植物が確認されています。
ラン科の植物の多くは着生型で、繊細な根を枝に絡ませて生活します。

ブロメリア科(パイナップルの仲間)には、葉のつけ根に水をためる種類もあり、そこにカエルや昆虫がすみつくこともあります。シダの仲間では、コウモリランやビカクシダなどが有名です。

また、苔や地衣類も樹皮に付いて育つ点では広い意味で着生植物といえます。

ハチドリとの関わり

着生植物はハチドリの生活に深く関わっています。
まず、花の蜜がハチドリの主要な食料です。
特にランやブロメリアの花は、ハチドリのくちばしの長さや形に合わせて進化しており、相互に助け合う関係です。

さらに、ブロメリアの葉の間にできる水たまりや着生シダの葉の裏などは、ハチドリが巣を作る安全な場所になります。
外敵から身を守りやすく、風や雨も防げるため、着生植物はハチドリの繁殖にも欠かせません。

生態系サービスと環境への貢献

着生植物は、森の水分を保つ役割を持っています。
葉や根が雨を吸い込み、乾いたときに少しずつ放出することで、樹木や他の生物の命を支えます。

また、葉の間にできた小さな空間には水や有機物がたまり、そこに微生物や小動物が暮らします。
こうして、地上とは別の「空中の生態系」が形成されます。

さらに、着生植物は雨をやわらげ、木の表面を保護する役目も果たします。
熱帯の森林では、こうした多層的な構造が森の安定性を保つ鍵となっています。

ポイント

  • 着生植物は、他の木や岩に付いて育つが、養分は奪わない
  • 雨や霧の水分、腐植などから栄養を得る
  • 熱帯や雲霧林など湿度の高い環境に多い
  • ハチドリにとって蜜源であり、巣の隠れ場所にもなる
  • 森の水分保持や多様な生物のすみかを支える

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WRITERこの記事の著者

hachidori-zukan

hachidori-zukan

【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!