マングローブとは、熱帯や亜熱帯の海と川が交わる場所に生える木々のことです。
英語では「Mangrove」と呼ばれます。
一つの植物の名前ではなく、塩分を含む泥地に生えるさまざまな種類の木をまとめて指します。
海の満ち引きに合わせて潮が出入りする環境にあり、植物にとっては非常に過酷な場所です。
由来・概要
マングローブは、主に東南アジア、南米、アフリカ、オーストラリアなどの海岸に広がっています。
日本では沖縄や奄美諸島、鹿児島の一部にも見られます。
「マングローブ」という言葉は、ポルトガル語の「mangue(湿地)」と英語の「grove(林)」が組み合わさって生まれたといわれます。
海水が流れ込む潮間帯に根を張り、1日のうち何度も海水に浸かる環境でも生きられるよう、特別な適応を発達させてきました。
特徴
マングローブが生きる環境は、塩分が多く、酸素が少ない泥地です。
そのため、ほかの植物が枯れてしまうような場所でも生き残るための工夫をしています。
まず、塩分への対策として2つの方法があります。
一つは、葉の表面にある「塩腺」から塩を外に出す方法です。
メヒルギやハマザクロの仲間がこれに当たります。葉の表面に白い結晶が見られるのはこのためです。
もう一つは、古い葉に塩をためてから落とす方法です。
オヒルギの仲間が代表で、不要な塩を葉と一緒に捨てる仕組みです。
さらに、泥の中の酸素不足を解決するために、「呼吸根」と「支柱根」を持ちます。
呼吸根は地面からまっすぐ突き出す根で、空気を直接取り込みます。
支柱根は幹からタコの足のように張り出し、体を支えながら空気も取り込みます。
また、マングローブは「胎生種子」と呼ばれる特殊な繁殖方法をもちます。
木から落ちる前に発芽し、細長い苗の形で地面に刺さってそのまま育ちます。
これにより、波に流されにくくなります。
ハチドリとの関わり
マングローブ林は、ハチドリが暮らす主要な場所ではありませんが、海岸近くで貴重な食料源となります。
マングローブの花は潮の干満に関係なく蜜を出すため、ハチドリにとっては安定した栄養源です。
また、周囲の森林が開発などで失われた地域では、マングローブ林が営巣や休息の場所として利用されます。
特に中南米の沿岸部では、ハチドリがマングローブの花やその周囲の植物を行き来しながら蜜を吸う姿が見られます。
生態系サービス
マングローブ林は、海と陸のあいだにある「自然の防波堤」としての役割を果たします。
根が網のように張り巡らされており、波の力をやわらげ、高潮や津波の被害を軽減します。
また、泥や落ち葉をからめ取って汚れをろ過するため、水をきれいに保つ働きがあります。
その根元は魚やカニ、エビなどの子どもたちにとって安全な隠れ家であり、「海のゆりかご」とも呼ばれます。
さらに、二酸化炭素を多く吸収して地中に閉じ込める力が強く、気候変動の緩和にも役立っています。
一方で、開発や伐採により、世界中でマングローブ林が急速に減少しています。保全と再生が国際的な課題となっています。
ポイント
- 熱帯や亜熱帯の海岸に生える特殊な木々の総称
- 塩分や酸素不足への巧みな適応をもつ
- ハチドリに蜜と休息の場を提供する
- 海の生物のゆりかごとして機能
- 津波や高潮を防ぐ自然の防波堤
- 気候変動の緩和にも貢献する重要な生態系
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hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

