泥ダイアピルとは、地下深くにたまったやわらかい泥が、上の地層を押し上げながら上へ動き、円柱やドームのような形を作る地質構造です。
「ダイアピル」とは「突き抜ける」という意味で、地下の泥が液体のように動いて上へ貫入することを指します。
時に地表まで達して噴き出すと「泥火山」になります。
由来・概要
泥ダイアピルは、軽い泥が重い地層の下にたまるときに起こります。
地層の重みで圧力がかかると、下の泥は押しつぶされ、行き場を求めて上に動き出します。
この動きによって、上の地層が盛り上がったり破れたりし、内部に円柱状の通り道ができます。
この仕組みは、岩塩が上昇してできる「ソルトダイアピル」と似ています。
特徴
泥ダイアピルができる場所は、泥が急速にたまり、しかも水を通しにくい地層です。
泥の中に水やガスが閉じ込められると、「過剰間隙水圧(かじょうかんげきすいあつ)」という非常に高い圧力が発生します。
この圧力が地層を押し破ると、泥が上へと突き抜けます。
地層を突き上げる途中で、周囲の岩や堆積物を取り込みながら上昇するため、内部はぐちゃぐちゃに混ざった「メランジ」と呼ばれる岩体になります。
活動が止まると、地中に泥のドームや管状の跡が残ります。
泥火山との関係
泥ダイアピルが地表に達すると、泥水やガスを噴き出して「泥火山」となります。
火山という名がついていますが、マグマではなく泥やメタンガスが出てくる現象です。
海底や陸上の両方で見られ、日本では北海道の新冠(にいかっぷ)や南海トラフなどで確認されています。
泥火山は、地下のガスや水が抜ける出口として機能し、周囲の地層の変形を引き起こすこともあります。
地球科学的な役割
泥ダイアピルは、地球内部で起きている流体の動きを示す重要なサインです。
地層の中で泥やガスがどのように動いているかを知ることで、地震や地すべりの予測、資源探査にも役立ちます。特に、石油や天然ガスを探すうえで重要です。
ダイアピルの上昇によって地層が持ち上げられると、ガスや油がたまりやすい「トラップ構造」ができます。
また、泥ダイアピルの周辺ではメタンガスの放出やメタンハイドレートの形成も確認されています。
形成環境
この現象は、堆積が活発な海底や大陸縁辺でよく見られます。
インドネシア、カスピ海、南シナ海、そして日本近海の沈み込み帯などが代表的な地域です。
これらの場所では、厚くたまった泥の層が下からの圧力で持ち上がり、海底にドーム状の地形を作ります。
海底探査で見られる「泥火山群」は、泥ダイアピルが何度も活動してきた結果です。
研究の意義
泥ダイアピルの研究は、地球内部で起こる物質循環やガスの動きを理解する手がかりになります。
また、環境変化を記録する地層解析の重要な対象でもあります。
泥に含まれるガスや微生物を調べることで、地下の生命圏の研究にもつながっています。
ポイント
- 泥ダイアピルは、軽い泥が上の地層を突き破って上昇した構造
- 過剰な圧力と密度の違いが形成の原因
- 地表に達すると泥火山として噴出する
- 石油・天然ガスの探査や地殻変動の研究に役立つ
- 地球内部の流体循環を知る重要な手がかり
関連用語リンク
- 泥火山(でいかざん)
- 堆積盆地
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

