樹液とは、木の中を流れる水や栄養分を含んだ液体のことです。
英語では「Sap」と呼ばれます。
木が生きるために欠かせない存在で、人間でいえば「血液」のような役割を果たします。
由来・概要
樹液は、木の体の中にある二つの「管」を通って流れます。
ひとつは根から水やミネラルを運ぶ「道管(どうかん)」、もうひとつは葉で作られた糖分を全身に運ぶ「師管(しかん)」です。
春になると、冬のあいだ根にためていた樹液が、温度の上昇によって枝の先まで押し上げられます。
このとき木の内部では水圧が高まり、樹液が枝の表面ににじみ出ることもあります。
カエデの木で言うと、これがメープルシロップの原料になる樹液です。
木の種類によって樹液の性質は異なります。
例えば、サトウカエデは糖分が多く、スギやマツは樹脂を多く含みます。
いずれも木の健康を保ち、成長や防御に重要な役割を担っています。
特徴
樹液は木の命を支える循環システムです。
根から吸い上げた水や栄養が幹や枝を通って運ばれ、葉では光合成によって糖が作られます。
そして、その糖分が再び樹液として木の各部分へと届けられます。
また、樹液には傷口を塞ぐはたらきもあります。
木が傷つくと、樹液がベタベタした膜を作り、菌や虫が入り込むのを防ぎます。
まるで木が自分で絆創膏を貼るような仕組みです。
人間にとっては甘味料や薬、樹脂としても利用されてきました。
古代から自然の恵みとして、暮らしの中に取り入れられています。
ハチドリとの関わり
ハチドリは花の蜜を主な食料としていますが、花が少ない時期や場所では樹液が重要なエネルギー源になります。
特に春の北米では、花が咲く前に渡ってくるハチドリたちにとって、樹液は命をつなぐ甘いジュースです。
シルスイキツツキは木の幹に小さな穴を並べて開け、そこから出る樹液をなめます。
ハチドリはこの穴を利用して樹液を吸い、さらにそこに集まる小さな虫も食べて栄養を補います。
キツツキが樹液の供給源を作り出し、ハチドリがそれを二次的に利用するという食物連鎖的な相互作用や、限られた資源を巡る競合関係が存在していると言えます。
ハチドリとキツツキの関係は、北米の森林や湿地など多様な生息地で確認されています。
樹液孔のある木のそばには、ハチドリが巣を作ることもあるほどです。
用語深掘り:樹液の働きと自然のつながり
樹液は単に木の内部を流れる液体ではなく、森全体の生態系を支える基盤でもあります。
流れ出た樹液はハチ、チョウ、ハエ、アリなど多くの昆虫を引き寄せます。
それを捕食する鳥やコウモリも集まるため、食物連鎖の起点となっています。
また、樹液の出る場所は微生物のすみかにもなります。
発酵や分解を通じて栄養が再び土に戻り、森の土壌を豊かにします。
つまり、一本の木の樹液が、森全体の健康を維持する循環の一部となっているのです。
ポイント
- 樹液は木の中を流れる水と栄養を含んだ液体
- 「道管」が水を、「師管」が糖を運ぶ
- 春に樹液が上昇し、新芽のエネルギーとなる
- シルスイキツツキが開けた穴をハチドリが利用する
- 樹液は森の生態系を支える重要な資源でもある
関連用語リンク
- 渡り
- 光合成
- 蜜源
WRITERこの記事の著者
hachidori-zukan
【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!

