湿地とは

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湿地とは、水で覆われたり水分で飽和した土地のことです。
英語では「Wetland」と呼ばれ、陸上と水域の中間に位置する独特の生態系です。

由来・概要

湿地という言葉が正式に使われ始めたのは1953年、アメリカ合衆国魚類野生生物局の報告書が初出です。
水鳥の生息地を研究する過程でこの概念が確立されました。

1971年にはイラン・ラムサールで湿地保全に関する国際条約が締結されました。
この「ラムサール条約」による定義では、湿地は湿原、沼沢地、泥炭地、水域などを指します。
自然・人工、恒久・一時を問わず、水分を多く含む土地が対象です。

湿地の定義は多様ですが、水文学的要素が中心にあります。浅い水域や水を含んだ土壌、そこに適応した植物群落などが特徴です。

主に湿原、沼沢地、ボグ(酸性湿原)、フェン(中性湿原)の4タイプに分類されます。
潮の干満の影響を受ける「潮汐湿地(ちょうせきしっち)」と、内陸にある「非潮汐湿地」が存在します。
南極を除くすべての大陸に分布しています。

特徴

湿地では地表が水に覆われている、または土壌が常に湿潤な状態にあります。
一時的な水たまりではなく、季節的または通年的に水が存在することが条件です。

この環境に適応するため、植物は酸素不足の土壌でも成長できるよう進化しました。
湿地はその生産性と生物多様性の高さで知られます。ガマ、ヨシ、スゲなどの草本植物が代表的で、特に淡水湿原は地球上で最も生産性が高い生態系の一つです。

湿地は、降水・地下水・河川水など多様な水源に支えられています。
水質も強酸性からアルカリ性まで幅広く、場所によってまったく異なる環境が形成されます。

ハチドリとの関わり

湿地の植物は、ハチドリにとって欠かせない蜜源となります。
たとえば「カージナルフラワー」は鮮やかな赤い花を咲かせる湿地性植物で、ハチドリを強く引き寄せます。かつて湿地再生によってこの花が復元され、ハチドリが何十年ぶりに営巣に戻った事例もあります。

「スカーレットハイビスカス」も湿地に生える代表的な花で、深紅の大輪がハチドリや蝶を誘います。
「マーシュブレイジングスター」も同様に湿地性で、夏に長い花穂を咲かせる多年草です。

さらに、湿地は昆虫の宝庫でもあります。
ハチドリは蜜だけでなく、小昆虫も重要なタンパク源としています。
湿地は両方の食料を提供する、理想的な環境なのです。

北米では「ノドアカハチドリ」などが湿地性保護区で観察されます。
ルイジアナ州のビッグブランチマーシュ国立野生生物保護区などがその一例です。

生態系サービス

湿地は天然の貯水池として、洪水の緩和に大きく寄与します。
大雨時に余分な水を吸収し、ゆっくりと放出することで、都市や農地の被害を抑えます。
また、沿岸部では高潮や津波から土地を守る働きもあります。

植物や微生物は水中の有機物や化学物質を吸収・分解します。
そのため湿地は「自然の浄水装置」として機能します。
硝酸塩やリンなどの栄養過多を抑え、水質を改善します。

さらに、地下水の涵養や流量調整にも重要です。
魚類や貝類の繁殖地としての価値も高く、エビ、カキ、サケなど商業的に重要な種も湿地に依存しています。

2005年の「ミレニアム生態系評価」によると、湿地は地球上で最も急速に失われつつある生態系ですが、その機能は極めて重要です。
炭素を多く蓄える泥炭地は、気候変動緩和にも寄与します。

ポイント

  • 水で覆われたり湿潤な土地に形成される生態系
  • 湿原、沼沢地、ボグ、フェンなど多様なタイプがある
  • 生産性と生物多様性が極めて高い
  • 湿地性植物がハチドリを引き寄せる
  • 洪水制御、水質浄化、炭素貯蔵など多様な機能を担う

関連用語リンク

  • ボグ
  • フェン
  • 潮汐湿地
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WRITERこの記事の著者

hachidori-zukan

hachidori-zukan

【野鳥観察が人生の目的】憧れのハチドリに会いたくて、図鑑サイトを作りました!ハチドリに会える度に、充実していくであろう当サイト。「ハチドリを知るなら当サイト!」って言っていただけるようなサイトを作っていきますので、見守っていただけると、幸いです!